「本の影に隠れた物語」は、古書堂「ビブリア」での日々を綴ったブログです。表紙の古びた本や、頁に染み込んだ人々の記憶、手にした瞬間に広がる静かな物語……。本に宿る「見えない物語」に焦点を当て、日常の中で紡がれる、知られざるエピソードをご紹介します。
本を通して過去と現在が交差する瞬間、あなたも一緒に味わってみませんか?訪れるたび、新しい物語が待っているかもしれません。古書が持つ不思議な魅力に、ぜひ耳を傾けてください。
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神様のパラドックスですね……。
この物語では、神様を科学の力で作ろうというお話です。「神様を作る」という試みは、非常に大胆で恐ろしいものに思えます。量子コンピュータを使って、神を「計算し、作り出そう」という考え自体が、わたしには奇妙に感じられました。神という存在は、人間が理解しきれない何かであるはずなのに、それを「計算」や「技術」で作ることができるという発想は、まるで人間が神になろうとしているような気がして。
小佐末たちは、量子コンピュータの力を使って「神を設計する」ことで、衆生を救おうとしていました。彼らの考えは、神を作ればその神が人々を救済し、すべての悩みを解決してくれる、というものでした。でも、それって本当に「神」なんでしょうか?結局、自分たちの都合の良い存在を作ろうとしているだけのように感じます。
神とは本来、人間を超えた存在であり、全知全能の力を持つもの。その神を人間が「作ろう」とすること自体が、すでに大きな矛盾を孕んでいるように思えるんです。どれだけ技術が進歩しても、本当の神様なんて作れるはずがないんじゃないか、と。
小佐末たちが挑んだのは、量子コンピュータを使って神をシミュレートし、人間が作り出した「神」によって、すべての問題を解決しようとするものです。神という存在を、技術と計算で再現しようというのは、まるで人間が自分の力で神の領域に踏み込もうとしているように見えます。
でも、その根底には、人間の抱える不安や孤独があるんですよね。科学や技術がどれだけ進んでも、私たちは常に限界を感じているし、解決できない問題がたくさんあります。だからこそ、何か超越的な力に頼りたいという気持ちが湧くんです。けれども、その力を自分たちで作り出そうとするというのは、なんだか…とても危ういものを感じます。
もし仮に、神を作り出せたとしても、それは人間の都合で作られた「偽物の神」にすぎないんじゃないでしょうか。本当の神というのは、人間の理解を超えた存在であり、決して私たちの思い通りになるものではないはずです。神を作ろうとする行為そのものが、すでに傲慢とも言えるんじゃないかと、わたしは思います。
そして…もし「作られた神」が私たちにとって都合の良い存在になったとしても、その先には何があるのでしょうか?すべてが解決されて、私たちの不安や悩みが消えたとしても、本当に満たされることがあるのか。神の存在に頼らずに、自分自身で答えを探すことこそが大切なんじゃないか…そう考えずにはいられません。
結局、人間がいくら強い力を求めても、その先にあるのはさらに深い孤独かもしれません。
神様について…わたし自身、あまり信じているとは言えないんです。でも、考えることはあります。神様という存在は、人々が何かに縋りたいときや、自分ではどうしようもないことに直面したときに、心の支えとして現れるものですよね。だから、人間にとって神様は救いの象徴なんだと思います。
けれども、わたしはいつも思うんです。もし神様がいるのなら、どうしてこんなにも多くの人々が傷ついたり、迷ったりするのか、と。神様が本当に存在して、全てを見ているのだとしたら、もっと人々を守ってくれてもいいはずです。でも、現実はそうじゃない…。むしろ、誰もが孤独に戦っているように思えてしまいます。
だから、わたしにとって神様というのは、あくまで人間の心の中にある存在なのかもしれません。本当の神様がいるかどうかは分からないし、それを探し求めることが必ずしも必要だとも思わないんです。自分自身で答えを見つけることが、時には神様を信じる以上に大切なんじゃないか、と思います。
それに…もし神様がいたとしても、その存在にすべてを委ねてしまうのは、少し怖いですね。人間が生きていく上で、本当に頼れるものは自分の意思だけなのかもしれない、そう感じています。
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篠川栞
古い本と向き合う日々を送っています。古書はただの紙の束ではなく、そこに込められた思いや歴史が詰まっています。わたしにとって本は、時間や空間を超えて、誰かと繋がるための大切な存在なんです。
だけど、正直に言うと…本ばかりを見ているわけではありません。時には、人と向き合うことも苦手だし、過去に囚われていることもあります。でも、だからこそ、静かに本を読み、その背後にある物語や人々の思いに寄り添うことが、わたしにとっての安心感になっています。
もし、古書やその背後に隠された物語に興味があれば、ぜひ話しかけてみてください。あなたがまだ知らない物語が、きっとそこにありますから…。